節分というと鬼退治にと豆まきをしますが、地域によっては、柊鰯と言って、柊の枝に鰯の頭を刺したものを飾る魔除けがあります。
このページでは、古くからある風習の一つ柊鰯(ひいらぎいわし)に関して以下でご紹介します。
・飾り方や場所について
地域 | 呼び方 |
青森県 | やっかがし |
岩手県 | やっかがし |
福島県 | 「柊と鰯」の類 |
栃木県 | 「柊と鰯」の類 |
群馬県 | 「柊と鰯」の類 |
千葉県 | 「柊と鰯」の類 |
埼玉県 | やっかがし・やいかがし・やきかがし |
東京都 | 「柊と鰯」の類 |
静岡県 | 「柊と鰯」の類 |
岐阜県 | やいかがし |
愛知県 | やいかがし |
滋賀県 | 柊鰯 |
京都 | 柊鰯、やいかがし |
大阪府 | 柊鰯 |
奈良県 | 柊鰯 |
和歌山県 | 「柊と鰯」の類 |
広島県 | やいかがし |
岡山県 | 柊鰯 |
香川県 | 柊鰯 |
このページでは、「柊鰯(ひいらぎいわし)」について、さらに詳しく呼び方と飾り方や場所についても解説していきます。
節分の柊鰯は地域ごとに呼び方が違う?
表で取り上げた以外にも「やいくさし」「やっさし」「柊刺し」「やきさし」と呼ぶ所もあるそうですが、これらの表現は、どこの地域なのか調べたところ出てこないので、古い時代の廃れてしまった言い方になると思われます。
いずれにしても「焼く」「臭い」「柊」「さす」がキーワードとなり、それぞれの地域で方言として伝わったと考えられます。
また「やいかがし」は、「厄嗅」もしくは「焼嗅」と書きますが、「臭い」が印象づけられています。
節分の柊鰯の地域ごとの特色
ここからは地域によっての特色を見て行きます。
青森県
ネットの情報では、青森とありますけれど、割った木に、煮干しや昆布、焼き豆腐をはさんで、家の窓に刺すとあり、鰯を使っているわけではなさそうです。
群馬県
こちらは現代の話しですが、1995年に、群馬県沼田市の塩野商店で、豆殻のついた大豆の枝と柊(ひいらぎ)を一緒に束ねた節分用「柊セット」が商品化され、これに家庭で焼いた「鰯の頭」を刺すと厄除けとして仕上がります。
引用元: http://edamame.co.jp/original4.html:
埼玉県
大豆の木に鰯の頭と尻を刺して焼きますが、この時、ツバをかけながら、その年の豊作を願い祈ります。
この焼いた鰯に柊をそえて、玄関(トボグチ)に2本さします。
奈良県
奈良県吉野町では「鬼」ではなく、和歌山県熊野の山中に棲むとされる一つ目で一本足の妖怪「一本だたら」から家を守るためと考えられています。
地域や家により処分方法も「灰になるまで焼いて玄関前に盛る」「玄関先に埋める」「神社でお焚き上げ」「塩で清め半紙に包み捨てる」と異なります。
柊鰯は「鰯の臭気で鬼を寄せつけない」と広く伝わっていますが、反対に「鰯好きの鬼をおびきよせて柊で目を刺す」とする地域もあります。
鬼にとって嫌いな鰯なのか、鬼の好きな鰯なのかと解釈がわかれるところが面白いです。
また、鰯は焼いた時の匂いが臭いからと言う理由で焼く地域もあれば、どこの地域か特定できませんでしたが、生の方がくさいからと、生の鰯の頭を使うところもあります。
新鮮な鰯が手軽に手に入るところは、生なのかもしれません。
さらに柊と鰯だけではなく、地域によっては葱や風が吹いたとき音のする大豆の豆がら、トベラをつけたり、鰯の代わりに、臭いにおいのらっきょうやにんにくを飾る所もあります。
飾り方や場所についても解説!
飾る場所は、玄関先に立てかけてたり、瓶にさして飾ったりする場合が多いです。
家の建築事情などが関係しているのかもしれませんが、窓にひもでつるして飾ったり、窓にさして飾るところもあります。
最近では、一戸建てではなくマンションなどに住んでいる人も多いので「家の中に飾る」のも珍しくありません。
節分の柊鰯の意味についても解説!
柊鰯の意味は
鬼の嫌いな匂いのきつい鰯を食べる事で、身体にいる鬼を追い出します。柊のとがった葉っぱで鬼の目を刺し、鰯の頭と柊を玄関に飾ることで、病気や災いを避けるためです。
なぜ2月3日の節分に柊鰯を飾るかというと、節分の風習は、平安時代初期から宮中で行われている「追儺(ついな)」の儀式から来ています。
追儺とは、中国で紀元前3世紀頃から行われていた行事で、鬼役の人を追い払う真似をし、邪気を払います。
節分は「季節を分ける」「節代わり」と言って、季節の変わり目になり、2月4日の立春は、旧暦では「新年」にあたります。
つまり2月3日の節分は「新年」の前日で、旧暦では「大晦日」になります。
追儺が日本へ伝わり、宮中では陰陽師により古い年の邪気を追い払う行事のひとつとなります。
室町時代には、追儺は武士をはじめ神社やお寺、そして民衆へと広がって行きます。
豆まきが宮中の行事に対して、日本の農村では古来から、臭いの強いにんにくやネギ、煮干しやなどを火にくべて呪文を唱える「虫の口焼き」と呼ぶ、田畑の害虫を追い払う風習がありました。
季節の変わり目に邪気を払う行事と冬から春にかけて虫が活動を始める立春の頃と、目的が一つになり「柊鰯」に変化していったと考えられています。
柊(ひいらぎ)
柊は固くて尖ったギザギザのついた葉であることから、触ると「ひりひり痛む」ので、同じ意味の動詞で「ひいらぐ」から「ひいらぎ」と名前がつけられたと言われています。
別名を「鬼の目突き」とも言います。
古くから魔除けになるとして、家の庭の表鬼門(北東)に柊、裏鬼門(南西)には南天(なんてん)を植えると良いとされています。
節分の柊鰯は地域ごとに呼び方違う?飾り方や場所についても解説!まとめ
柊鰯の風習は、その土地の習慣や言葉に合わせて呼び方が変わったのかもしれませんが、「臭い」もので「鬼を退治する」ということは共通です。
体調を崩しやすい時期に、柊鰯を飾るだけでなく、カルシウムやたんぱく質に鉄分、また良質な脂質が摂れる栄養豊富な鰯を食べる事は理にかなっています。
現代風にアレンジして取り入れたり、折り紙にして子供たちに伝えたりと、形は変わっても伝統の一つとして楽しみたいです。