冬の訪れを表す「木枯らし1号」ですが、これから師走で忙しくなってくる時期に、どこか気持ちがほぐれる発表でもあります。
そんな「木枯らし」にまつわる季節や歌の話、「木枯らし1号」の条件や定義についてまとめました。
古くから歌で詠まれてきた季語だけではなく、身近なものとして親しまれていることがわかると思います。
木枯らしは季語で季節は?
「木枯らし」は、冬の天文(天文と気象に関する)の季語として使われます。
「木枯らし」を季語にした俳句のいくつかをご紹介します。
松尾芭蕉
木枯しや竹に隠れてしづまりぬ
木枯らしが吹き、竹の葉がざわめくが、竹林へと消えてゆき、しんと静まり返った。
情景の描写が、カッコいいです!
芥川龍之介
凩(こがらし)にひろげて白し小風呂敷
森鴎外
木枯やひろ野を走る雲のかげ
木枯らしが吹くだけではなく、広い野原に雲が追いかけて行くように流れている様が浮かびます。
類語には、「北風(きたかぜ)」「寒風(かんぷう)」「空っ風(からっかぜ)」
英語では、「wintry wind」と訳されますが、おそらく日本にいる外国人に対しての説明として使うことはあっても、風土が異なる海外では、説明が難しいかもしれません。
俳句以外に「木枯らし」を題材にした歌で、松任谷由実さんの「木枯らしのダイアリー」や小泉今日子さんの「木枯しに抱かれて」など、季節を感じ、思い出となっている人も少なくないと思います。
天気予報の一つだけでなく、歌に使われ、身近に使われ親しまれているのがわかります。
こんなん出ました~♪
枯れ葉散る頬に伝わる木枯らしの冷たい風に焼き芋恋し
秋晴れも頬に伝わる木枯らしの冷たい風に冬の音近し
木枯らし意味や由来?
木枯らしは、秋の末から冬にかけて、強く吹く冷たい風のことを指します。
また吹き飛ばされた枯れ葉が、風の道筋を追いかけると言う意味で、中国語以外の国字として「凩」という漢字もできました。(漢検1級)
これは16世紀ごろの「妙本寺蔵永禄二年いろは字」に掲載されていたようです。
ちなみに、日本の伝統色と呼ばれるものに、木枯茶(こがれちゃ)がありますが、これは安土桃山時代ごろに誕生したと言われています。
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木枯茶
枯れ葉のような茶系で、橙色を帯びたこげ茶色になります。
少なくとも、桃山時代には「木枯茶」があったので、冬に近づくころに吹く風として「木枯らし」という認識が、当時の日本人にあったとは驚きです。
感覚が現代人よりも鋭敏だったのかもしれません。
木枯らし1号の条件や定義は?
気象庁が「木枯らし」の条件に当てはまるものを、その年初めて観測した時「木枯らし1号」として発表をしていますが、「季節の風物詩(=冬の到来)」という意味合いがあります。
「木枯らし1号」は、1968年頃から日本気象協会が発行する雑誌「気象」で見られるようになりましたが、気象庁が発表しはじめたのは、いつごろからなのか明確な記録は残されていません。
1991年に、現在の基準になりました。
■東京方面での「木枯らし1号」は、毎年10月半ばから11月末までの間で、気圧配置が西高東低の季節風が吹くことです。
東京では、風向きが西北西から北よりの”やや”強い風になり、最大風速は、8m/s以上の風です。
■近畿方面では、東京方面よりやや遅く、
いわゆる二十四節季のひとつ霜降(そうこう)10月24日ごろから、冬至の12月22日ごろまでの間に、初めて吹く最大風速8m/s以上の風です。
気象庁風力階級表を見ると、風力は0から12までの13段階に分かれていて、木枯らしは風力「5」になります。
ちなみに風力「6」から「やや強い風」と表記されます。
2号、3号があるのではと思いますが、冬型が強まると、太平洋側では頻繁に吹くため発表はしません。
どうして東京と近畿の2つに限定されているかと言うと、木枯らしは平野部に見られ、山間部などでは、吹き上げられ、風の勢いが弱まり「木枯らし」ではなくなってしまうからです。
それと、この2つの地域は日本を代表する人口の多いところで、話題になりやすいことから取り上げられるようになりました。
まとめ
「木枯らし」と聞くと、寒い枯れた地で風が吹くイメージを浮かべてしまいますけれど、人によってとらえ方は様々あり、歌に詠んだりと、人は自然と戯れ生活に取り入れ楽しんできたことがわかります。
「木枯らし」という言葉から、人間は、自然の一部でもあると気づかされます。